「熱中症」の怖さについては、広く知られていると思いますが、それでも毎年、動物病院に運び込まれ、生死をさまよう犬がいます。熱中症について正しく理解し、愛犬を守りましょう。

熱中症は病気ではなく、防げる事故だ

「夏に服を着せるとよけい暑そう」と思われがちだが、いまやドッグウェアもどんどん進化。真面目な飼い主から人気の高い、機能性重視のアルファアイコンがつくる「サマークーリングタンクトップ」は、太陽光や路面の照り返しの熱から愛犬を守る「遮熱効果」、「吸水速乾機能」を活かして濡らせて着せることにより気化熱を利用したクーリング効果も。ボディ横は風通しがいいメッシュ生地。ついでにUVカット効果まで。私の服より涼しいんじゃないかな

「熱中症」。名前に「症」とついているので病気だと思われがちだけど、これは病気ではなく、「事故」だと私は認識している。死に至ることもある緊急事態なので、「熱中症かも!?」と少しでも疑ったら、飼い主は速攻で動物病院に連れていくことが重要だ。

裏を返せば熱中症は、病気ではなく事故なので、心がけひとつで回避することができる。ちゃんと飼い主が気配りをして、無茶をしなければ、かなりの確率で犬を守ることができる。だから、ぜひみんなに熱中症の怖さを知り、その予防と対策を知り、実行してもらいたいと願っている。

なぜ獣医でもない私がこんなに強く言うかというと、何を隠そう、バカな飼い主だった私は、先代のコーギーのタビィをあやうく2歳の若さで熱中症で殺すところだったからだ。みんなには同じ失敗をしてほしくない。この私の失敗が誰かの教訓になるのなら、恥も外聞もなく告白する。熱中症で死んでしまう犬を1頭でも減らしたい。

弟のおうちにやってきたもうすぐ1歳の福之助(イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル)。暑がりだというので、クーパーとお揃いの服をプレゼントした。ついでにアメリカ製の「アクアボット」も。ポンピングをして圧をかけることにより霧状のスプレーがでてくる。気化熱で体温が下がるようにウェアを濡らすときに便利。そのほかアウトドアで足などを洗うときにも使えるね

タビィの熱中症事件

それはもう30年近く前のこと。私が大人になって、自分の全責任においてワイマラナーとコーギーを飼養し始めて2年目の頃だ。まだ未熟なビギナー飼い主だった……でもそれは飼い主の言い訳に過ぎない。

夏休みにワイマラナーのバドの大阪の実家(母犬のおうち)を訪れていたときだった。いわゆる犬の里帰りで、前日、東京から大阪にクルマで移動し、ひと晩泊めてもらってたっぷり楽しい犬談義をして、それから自分の実家あった広島へ、夕方涼しくなる頃を見計らって出発するスケジュールだった。

「今からまた広島までドライブだから、今のうちにのびのびと運動させてあげよう」という親心が仇となった。犬親戚と一緒に地元の散歩スポットを案内してもらい、夕方4時くらいに河原で犬を30分ほど遊ばせた。いま思えば、河原の丸いゴロゴロした石は、遠赤外線の焼き芋を焼く石のごとく蓄熱していて、足の短いコーギーのおなかを輻射熱で熱したのだろう。自分は靴を履いているから、石の熱さなんか全然気がつかなかった。それにもう時は夕方。直射日光がジリジリする時間は過ぎていた。油断した。

そのあと、いったんバド実家にふたたび帰宅。当時、私はハッチバックのクルマに乗っていて、まだ子どもがいなかったので、リアシートを全部倒してリアとラゲッジを全部犬のスペースとしていた。そしてエアコンの冷房をガンガンつけて、クルマで10分ほど走った。

それから広島へ行く準備をしていると、ふと見るとタビィの様子がおかしい。なんだか邪気が抜けた可愛い目をして、ポ〜ッとしている。視点が定まっていない。意識障害を起こしていたんだと思う。フラフラと廊下を歩いて、壁にぶつかっているのに、まだ前に進もうとウゴウゴしている。認知症の犬もよくやる症状だが、これは見当識障害か。どうした、タビィっ!? 次の瞬間、この奇っ怪な行動の原因に、私は気づいた。

「あっ!熱中症だっ!」

高校生のときに動物病院でバイトしていた経験があったのは幸いだった。これが一刻を争うヤバい事態なことだけは感じ取った。とにかく体温を下げなくちゃ!! すぐにお風呂を貸してもらい、タビィの全身に水シャワーをかけ続けた。水分も補給させたいから、口の中にも水を注いだ(むせないように気をつけて)。歯茎が青い。普通はピンク色をている歯茎が、青紫色になっていた。チアノーゼだ!! ヤバい、これは本当にヤバい。血液中の酸素がなくなっている重篤な症状だ。タビィが死んじゃうっ! 泣きそうになりながら、かつてバイトをしていた広島の仲良しの獣医の先生に電話をかけ、症状を説明すると、「1分でも1秒でも早く、近くの動物病院に連れて行け!!」と言われた。

そこでたっぷり水を含ませたバスタオルにタビィをくるんで、いちばん近い病院へクルマで駆けつけた。先生が、タビィの全身にアルコールらしき液体をスプレーしまくった。気化熱で体温を冷やすためだろう。そして血液検査の結果、肝・腎障害が起きていると言われた。危篤の状態だった。

危篤!? そんなにひどいの!? 遊ばせたのはたった30分くらいだったのに。クルマに乗せたのは10分程度だし、あのときエアコンの風が届くようにあえてバリケンには入れずに広いスペースに乗せたのに。なぜ?なぜ?なぜ!? なんでさっきまで元気に走り回っていたタビィが、いま死にそうになっている? 私はなぜこんな大きな失敗をしでかした!?(いま思えば「焼けた石の河原で遊ばせたこと」「遊んだあと、水分補給させなかったこと」「遊んだ直後にすぐクルマに乗せたこと」が主な敗因だったと思います)

すぐにシャワーで全身に水をかけて体温を冷やしたことはよい救急処置だったと、先生は言ってくれた。その言葉がせめてもの救いだったけど、それ以外は自分を責め続けた。当然タビィはそのまま入院することに。その夜、タビィは生死をさまよった。

メルのような短頭種は、とくに熱中症になりやすい犬種。弟のおうちの庭にある水盤(周辺環境を反射して景観とするなどの目的で建物に設けられる浅い水面)は、太陽光の反射を楽しむためにつくったそうだが、犬の水遊び場として最高。メルが気に入って、ずっとおなかを冷やしていた

翌朝。幸い、タビィは生き返った。すっかり元気になり「点滴チューブを引き抜いて困った子だ」と、先生は笑っていた。危篤の状態は脱したのだ。よかった、よかった、よかったよっぉぉぉぉ。先生は、命の恩人だ。

しかし、そうはいっても一度破壊的なダメージを受けた肝臓と腎臓の数値はすぐには戻らない。本来なら数日間の入院が必要と言われた。「普通だったら、まだ弱っているはずなんですけどね」と先生は笑っていたが、果たしてこの状態で退院させ、広島に移動させていいものか。でも旅先でずっと入院するのも……。そこで広島の先生から大阪の先生に電話をしてもらい、相談してもらった結果、検査結果のデータをもらったうえで、夜中の涼しい時間に広島へ移動し、広島の病院で再入院させることとなった。

その後、タビィはみるみる回復し、普通に元気になった。肝臓や腎臓に障害が残らないでよかった!

熱中症はあっという間になる。油断大敵!

このようにして幸い一命は取り留めたけれど、そこで私が身に染みたのは、熱中症は本当にわずかな時間でも、あっという間になる、という事実だった。なるときは本当にあっという間に具合が悪くなるんだよ。たしかにそういう状況をつくったのは飼い主の責任なんだけれども、熱中症にさせたい飼い主がいるわけじゃない。「善意過失」が引き起こした事故なのだ(悪気はないけど、過失はある)。

夕方でもまだ路面が熱いときは多い。私は心配なときは、自分の手のひらでじかに路面を触ってみて、熱さを確認している(へんなおばさんと言われてもかまわない)。まだ熱ければ早期撤退、頻繁に水を与えるよう心がけている

もちろん発症するかは、河原の焼けた石ころや外気温などの環境要因だけでなく、個体の体力や体型でも違う。短足なコーギーはおなかが地面に近く輻射熱を受けやすい。体高の低い小型犬も同じだから気をつけた方がいい。クーパーのように足が長くて、地面と胴体までの空間が広い犬は、体高の低い犬よりも、同じ環境条件だったら熱中症になりにくいはずだ。だからあのときタビィと一緒に遊んだワイマラナーのバドは熱中症にならず、全然平気だったのだと推察する。

熱中症になりやすいメルは、クーパーの服よりさらにワンランク上のものを選んだ。「サマークーリングパーカー」といって、遮熱生地などは同じだが、首の周りにぐるりと保冷剤を入れられるようになっている。頸動脈を冷やすことによって体温の上昇を抑える効果が期待できる。でもどうもメルがパーカーを着ると、ピンクのてるてる坊主っぽい(笑)

それと要注意なのは、メル(ボクサー)のような短頭種。フレンチ・ブルドッグ、パグ、ボストン・テリア、ペキニーズなどの鼻がつぶれた犬は、ラジエーター機能が悪い。マズルが短いため、熱い外気が冷やされないままダイレクトに肺に入ってくるので、体が温まりやすい。またハアハアと息をして(=パンティングという)熱い体温を下げようとしても、鼻が短いから熱を外に効率よく排出できない。このように短頭種は体温調節が下手くそなので、飼い主はほかの犬種以上に十分気を遣ってあげる必要がある。

それから体力の衰えた老犬、まだ内臓の発達が未熟な子犬、心臓など循環器に持病のある犬も、健康な若犬より熱中症になる危険が高い。安易な擬人化はよくないけれど、人間でも幼児やお年寄りが熱中症になりやすいことを思えば想像しやすい。

気温・湿度・水分補給チェックを欠かさない

お散歩のときは、必ず犬用水筒(またはペットボトル)とボウルを持参。ちなみに、わが家ではホームセンターのお風呂グッズコーナーで見つけたシリコン製の折りたためる湯おけを愛用。持ち手がついているから飲ませやすい。小型犬用の小ぶりなシリコン製水飲み器はよく売っているけれど、なかなか中・大型犬のグッズはないんですよね。これはオススメです

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白石花絵

雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

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