都会でもオアシスはある①「代々木公園」編

| 白石かえ

ニッポンの首都・東京。コンクリートジャングルと思われがちですが、意外や都心にも緑やふかふかした草や土のある、犬が喜ぶ散歩道があります。そんな都会のオアシスを順番に紹介しましょう。1回目は「代々木公園」です。

都内有数の広さのドッグランがあり、いまや都民だけでなく他県から遊びにくる家族も増えた代々木公園。森が豊かで、四季折々の自然を楽しめます。

明治神宮に隣接し、都会とは思えぬ緑の濃さ

中央広場を歩く。都心で土の地面があることがありがたい。犬の四肢の骨関節にやさしいのだ

東京都渋谷区。原宿駅を下りてすぐ。鬱蒼とした森の明治神宮に隣接しており、都会とは思えぬ濃い緑が広がっている。きらびやかなブランドの路面店が並ぶ表参道のすぐ先に広がっているから、よけい異次元空間みたい。ニューヨークにセントラル・パークがあるように、東京には代々木公園がある。そう自慢したくなる緑豊かな都市公園だ。

四季折々の花も楽しめる。初夏はバラがきれい。桜や金木犀の季節も見事。ふかふかした原っぱもいい

開園したのは、1967年(昭和42年)10月20日(今年50周年なのね)。全園開園は昭和46年4月。


開園面積は、540,529.00平方メートル(平成27年7月1日現在)。十分広いと思っていたが、23区内の都立公園の中では5番目の広さとのこと(もっと広い公園が都内に複数あるということにもちょっとびっくり)。


もともとこの場所は陸軍代々木練兵場で、戦後は米軍の駐留軍家族の居留地・ワシントンハイツだった。それから1964年(昭和39年)東京オリンピックの選手村となり、後に代々木公園となった。こうした歴史背景のおかげで、渋谷〜原宿〜新宿をつなぐ超一等地に、こんな広大な土地を公園として残せることになったのだろう。

残ったことが奇跡!? 東京ドーム約27個分の森

西門近くのコーヒースタンドで買ってきたコーヒーを飲んでひと休み。クーパーはちゃっかり日陰で休んでます

とはいえ、今でこそ自然環境を維持することの重要性は大衆に受け入れられているが、当時は高度経済成長期のまっただ中。経済第一主義の時代に「よくぞ残してくれました!」という気持ちになる。ただ、すでにその昭和の頃から、急激な自動車の普及などによる大気汚染等の公害問題が浮上しており、自然環境保全の大切さや公園緑地の確保に関心が高まっていたという。

そんな時代だったからこそ、東京で初めて「森林公園」という名前のついた代々木公園ができた。高度経済成長期にビルにならずにこの森が残ったことは、ぎりぎりの奇跡的なタイミングだったのかもしれない。


そう振り返ると、目の前にいま当たり前に存在する代々木公園のありがたみがよけいに増してくる。ちなみに、園内は約1/3が樹木に覆われており、明治神宮の森と合わせて東京ドーム約27個分に匹敵する森があるそうだ。東京のど真ん中に、こんな大きな森を残してくれた諸先輩方に感謝したい。

でっかい木! 森林公園として整備された代々木公園。代々木公園も明治神宮の森も、原生林や自然林ではなく、人の手によって計算されて造られた森なのです。すごいね〜

代々木公園は、噴水のある池や中央広場、ドッグランなどがある森林公園としてのA地区と、道路を挟んでNHK側に、ほぼ毎週末いろいろな催しが開かれるイベント広場、野外ステージ、陸上競技場、サッカー・ホッケー場を備えたB地区とに分かれている。


ちなみにA地区とB地区を結ぶ人工的なペデストリアンデッキ(高架式遊歩道)は、公園の緑やイベント広場の屋台たち、そして代々木体育館や渋谷方面のビルなどを見渡せる眺望の良さがあり、ワクワク感をアップさせてくれるが、こうしたデッキは日本初の試みだそう。


その後各地にペデストリアンデッキは建設されたとのことだが、まさか代々木公園が第1号とは。戦後の都市公園のデザインとして先駆的な存在だったとも思える。

もとは犬連れ禁止!? でもいまでは愛犬家の聖地

噴水そばの木陰のベンチは、風がそよそよ。天然のクーラー

こんな風に広大な土地にいろいろなものがあり、今では東京の愛犬家の聖地のような代々木公園だが、10数年前までは、実は明治神宮に隣接したエリアにバードサンクチュアリがあったことを理由に、A地区は「犬入園禁止」だった。


しかし、周辺住宅街には大使館も多くて外国人が住んでいる割合が高かったせいか、(私が渋谷区に引っ越ししてきた15年くらい前は)国際的な慣習がまかり通っていて公園内犬連れ禁止は形骸化したルールとなっていた思い出がある。


引っ越しして1年間ほどは「犬入園禁止」の看板を無視できない小心者だったため、公園内に入ることなく(犬なしで公園を歩こうなんて思わなかったし)、公園を取り囲む歩道を犬と散歩していたが、春、見事に桜が咲き誇る公園に普通に入っていく犬連れ外国人家族を見かけたので、私も犬と恐る恐る公園内に足を踏み入れ、そして、ちょうどいた公園の管理人らしき人に「あのー、犬と一緒に入ってもいいですか?」と尋ねてみた。すると笑顔で「どうぞどうぞ。綱をつけているなら、全然かまいませんよ」と言われて、ものすごく安心した(内心、じゃあ、あの看板、はずしてよ!とちょっと思ったけど。笑)。

原宿駅からすぐの入り口である「原宿門」。もう犬入園禁止とは書いていない

その後いつのまにか犬禁止の看板は取り外され、そうこうしていたら2007年4月にドッグランがつくられ(当時は都内最大級規模)、堂々とA地区にも犬を連れて散歩できるようになったのである。そう考えると、代々木公園における犬文化の歴史はまだ10年程度と浅い。


今では近所の人ばかりではなく、県外ナンバーのクルマに犬を乗せて遊びにくる人もいて、ちょっとした犬観光地となっている。この10年ほどでずいぶんと変わったものだ。これは愛犬家にとってはよい変化であり、犬に市民権が与えられた一例とも言える喜ぶべきことだと思う。

ローカル・ルールはちゃんと守る

休日ともなると、たくさんの犬で賑わうドッグラン。いろいろな犬種を眺めるだけでも楽しい

ただ、残念ながら、不特定多数の犬や飼い主が集うことは、トラブルを誘因させることにもなる。


まずはドッグランでのトラブル。ドッグランは、犬をリードから放して自由運動させてよい場であるが、決して目を離してよい場所ではない。


飼い主同士がお喋りに夢中で愛犬を見ていなければ、いつウンチをしたか見過ごされる。また犬同士の挨拶や急接近のあと、ケンカ勃発などが始まるときにはたいていその前に犬同士のボディランゲージから見てとれる予兆があるので、その段階で飼い主が犬を引き離せば大きな事件になることも減るはずだ。


これは代々木公園に限らず、どこでもそうだが、とにかくドッグランではリードは放してもいいけれど、愛犬をつねに見張っておくことが大前提。またリードを放さずに、周囲との間合いを図ったり、愛犬の様子を見極めることをしてもいい。


なにしろ地元の犬にとって、代々木公園のドッグランは自分のホームグランド(=テリトリー)だ。群れ意識ができている仲間の犬がいることも多い。いくら人間が「公園は公共のもの」と言っても、それは人間の理屈と慣習。地元の犬にとっては自分たちの縄張りに新参者が入ってくるわけだから、そこは犬の世界のローカル・ルールが優先されるので、飼い主が十分注意を払わなければいけない。犬の行動学についてちょっと予習してからドッグランに入る方が、明らかにトラブルは起きにくい。


また人間側のローカル・ルールというものもある。まず代々木公園ドッグランは登録制なので、手続きをしないと入ってはいけない。そして登録した際に利用時のルールを教えてもらうことになるが、たとえばここではボール遊びは禁止である。


よそのドッグランではボールOKのところもあるだろうが、代々木公園ではトラブルの経験などからNGにしているわけで、ローカル・ルールを無視してはいけない。みんなが守ることでトラブルが減る。

ルール違反のみならず、人として信じがたいモラル違反もある。


たまたま近所だから出くわしたのだが、ドッグランにミニチュア・ダックスフントを置いたまま、いなくなった飼い主がいた。ドッグランに遊びにきていた者たちで手分けして呼んでも探しても1時間以上戻ってこないので、もしかしたらここに遺棄されたのかと、みなで本気で心配した。


もう警察に連絡を入れるしかないか、と言っていたとき、「(ドッグランで)彼女とケンカになり、この犬は彼女の犬だから置いていった」と言う彼氏が戻ってきて、事なきを得たものの、言動には不可解な点も多かった。彼女は戻ってこないし、諭したら男性に逆ギレされたし(怒)。


ドッグランは犬の一時預かり場ではないし、ましてや遺棄現場になってはいけない。そんなの当たり前のことなんだけど、そうじゃない人もいるのが現実である。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

アクセスランキング

人気のある記事ランキング

子犬特集