日本上陸! ノーズワークは犬が喜ぶトレーニング

| 白石かえ
出典: ©白石かえ

昨年くらいから日本でも注目され始めた「ノーズワーク」。トレーニング兼、遊び、兼ドッグ・スポーツにもなる、愛犬の犬生(人生)がハッピーになるゲームを紹介します。

やややっ! ノーズワークが楽しくなってきたのか、ニオイに集中し始めたのか、しっぽが上がってきたぞ!

汎化とノーズワークを並行して行うのが理想

細野さんは、汎化とノーズワークを子犬のときから並行して行うことにより、「かなりよい犬生(犬の人生)になるはずだ」と言う。ふむふむ、なるほど。だから細野さんは「目標はトイレ・トレーニングと同じくらい、ノーズワークが日本に浸透すること」だと言っていたのだな。

汎化や社会化トレーニングの重要性は、近年、だいぶ飼い主さんの間に浸透してきている。でも社会化だけでは完全に恐怖心を克服できない犬もいる。モノ、事象に慣らしていくだけでなく、愛犬の心そのものを強くし、自信をつけさせたい。そうすることにより、いちいちいろんな事柄にビビらなずに、堂々と生きるバラ色の人生(犬生)になるのなら、願ったり叶ったりだ。

集中力と意欲が湧いてきたら、サーチが早くなる。そのレベルを先生は見極めて、箱の数を増やし、少し難しくした。やはりそういう見極めのできる先生に習うことが大事だ

たしかに、ビビりのクーパーも、このノーズワークに参加させると、目の色が変わり、しっぽが上向きになり、周囲の環境が気にならないほどニオイに集中していた。わずか2〜3分のことを2セットしただけなのに。不思議。これが鼻を使う悦びなのか。本能スイッチが入ったのか。犬にとって嗅覚を使うというのは、そんなに本能を刺激し、嬉しいことなのか。見ているこちらが新鮮に驚いてしまう。

足が悪くても老犬でも、鼻が現役なら参加可能

ノーズワークの威力はだんだん感じてきたが、さらに、犬種や年齢に関係なく参加できるというのも魅力だ。足に障害があってもできるし、筋肉が衰えた老犬になってもできる。鼻はいつまでも現役だからだ。シニアの脳トレにもいいだろう。

進行性脊髄軟化症を患う14歳のミニチュア・ダックスフントのクッキーさんも、ハンディを感じさせない意欲的な動きをしていた

そして、ハンドラーも誰でもできる。アジリティーのようなドッグ・スポーツと違って、一緒に走る必要などないので、誰でも大丈夫。アメリカでは、車椅子に乗っているハンドラーや94歳のおばあちゃん、8歳の子どもも参加しているくらいバリアフリーなゲームなのだ。犬だけでなく、飼い主の高齢化社会が今からやってくるので(笑)、これもありがたい。

また、ほかの犬を見ると吠えてしまう、などの理由で、トレーニングやドッグ・スポーツを諦めていた家庭でも、ノーズワークは完全に1頭ずつで行うゲームだから遠慮は無用。これなら、より誰でも気軽に参加しやすい。それに自信がつけば、いつか吠えたりしなくなることも考えられる。

自分の順番が来るまでは、パーティションで区切られたブースにて待機をしたり、冷房をつけた自家用車の中で待つ

さらに、上級者になると、競技会に参加するドッグ・スポーツとしても楽しめる。飼い主にとっては、ちょっと競争することがモチベーションになったりするのも事実だ。

競技会レベルを「ノーズワーク」と言い、おやつを自主的に探し、自分で発見して食べて自立心を養うのを「フードサーチ」と、区別して呼ばれることもある。「ノーズワークは飼い主のためにあり、フードサーチは犬のためにある」と言われるが、まさにそのとおりだろう。

もし自分の目的が、誰かと競いたいわけでなく、愛犬の自信をつけさせ、成長を見届けたいというのなら(クーパーと私はこっち)、フードサーチをずっとすればいい。このゲームは100点満点はなく、いろいろな方法があるし、完成形はない。つねに毎回、犬の状態によって変わっていく。それでいいのだ。

人間が「教える」のではなく、犬に「教えてもらう」

ノーズワークは、人間が犬に「教える」のではなく、犬に「教えてもらう」ゲーム。オビディエンスや普通のドッグ・スポーツとはここが決定的に違う。

だから、むしろ普段、真面目にオビディエンスなどの訓練をしっかりしている犬は、ハンドラーの指示がないことに戸惑うらしい。「え? 何をやればいいの?」と、犬も思うのだろう。それもまた面白い。その様子を見てみたい。

ノーフォーク・テリアも淡々と着実にニオイをサーチしていた。小型犬の場合は、深い箱だと顔を突っ込むことが怖かったりして難しいことがあるので、浅い箱(箱の蓋)もよく利用される

よって飼い主はハンドラーと言っても、やることはリンクに連れてきて、先生が「どうぞ」と言ったら、犬を放すだけ。一切のコマンド(合図)は出さない。まあ、最初に小さい声で「サガセ」くらいは言ってもいいかもしれないが。とにかく、犬の自主性に任せることが大事。

トイ・プードルだって、もとのスタンダード・プードルはガン・ドッグ。とても優秀なサーチ・ドッグになる。可愛いだけじゃないのよ〜

そして1セット終わったところで先生が「はい、つないでください」と言ったら、飼い主は犬をつなぐ。飼い主の役目はそれだけなのだ(もちろん、ゲーム中に、犬の動きを注意深く観察することはするけどね)。

犬は勝手に自由に、ニオイを探し出す(探索本能)。そしておやつ(獲物。ごほうび)を自ら食べる(捕食する)。こうした一連の、犬という動物としての狩猟本能を満たすことが、心や脳の充足感につながり、結果的に問題行動が減ったり、自信がついたりするのではないかと思う。

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飼い主ができることは、とにかくゲーム中はその様子を観察するのみ。愛犬が上手にフードを見つけると嬉しくなっちゃって「えらいぞ!」「グーーーッドボーーーイっ!」と言いたくなっても、口にだしたり、拍手したりしてはいけない。グッとこらえて銅像にように立っておく。犬の集中を削ぐようなことはしてはいけないのだ。飼い主が介入すると、犬の自立心や自らの意欲が育たないから、過保護な飼い主にならぬよう注意。

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白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

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