9/1は防災の日。ペットの「同行避難」って、何だろう? シミュレーションをしてみよう!

| 白石かえ
出典: ©白石かえ

9月1日は防災の日。子どものとき、学校で避難訓練をしたことを思い出します。でも、大人になると避難訓練も他人事のように思いがち。けれども、地震、台風、津波、噴火……など、日本は自然災害の多い国。また火事などに巻き込まれることも。他人事ではありません。

まず防災の日のおさらい。9月1日は、1923年に関東大震災が発生した日。東京、神奈川、千葉が震度7の地震に襲われ、津波、火事も発生し、多くの人命が奪われた。かつ、9月は台風が多く来襲する時期だったので、その前に防災の意識を高めるために、1960年に防災の日が閣議決定された。

でも近年では台風の時期も9月より早まったような……。大雨、豪雪、ゲリラ豪雨、浸水、地滑り、突風、竜巻、雹(ひょう)など、全国の異常気象が頻繁に報道される。9月に限らず異常気象が増えたと感じるのは私だけではないだろう。「観測史上初」という言葉もたびたび聞くようになった。

さらには地震や噴火。6年前(2011年)の東日本大震災も、昨年(2016年)の熊本地震も、地元の人以外はもう過去のことと忘れがちかもしれないが、そんなことはない。まだ被災生活を続けている人たちがいるし、親族を失ったり、仕事を失ったり、生活が激変して将来を不安に思っている人たちも少なくないのだ。先月、岩手県陸前高田市に行く機会を得たが、本当に復興はまだまだこれからだと痛感した。切なく、苦しくなった。風化させてはいけない。

2017年7月、陸前高田市にはまだ津波の傷跡がそのまま残っていた。4階までが波にのまれ、5階のベランダは残っている。津波の破壊力の凄まじさを感じた

ましてや私たち犬猫の飼い主は、自分の大切な獣の扶養家族をしっかり守らねばならない。飼い主が被災すれば、同じくペットたちも被災する。そこで「同行避難」だ。しかし、同行避難って聞いたことがあっても、実際はよくわからない飼い主さんも多いのでは。一緒に学んで、いざというときに焦らないようにしたい。天災は、いつ自分の身に降りかかるのかわからないのだから。

同じく陸前高田市。盛り土工事が今なお進行中

同行避難とは!?

災害時、家屋の倒壊などにより自宅での生活が困難になったとき、あるいはその脅威が近づいているときには、自治体が開設する体育館などの避難所や仮設住宅にて、一時的に避難生活を送ることになる。

そのとき「避難をする際には、飼い主はペットと一緒に避難する同行避難が原則となる」と環境省が明言している。その周知のために、一般飼い主向けにわかりやすく作成された『災害時におけるペットの救護対策ガイドライン』が、ネットから誰でもダウンロードできるなどの取り組みも為されている。同行避難について、基本的なことがよくわかるのでオススメだ。

2016年の渋谷区防災フェスにて。同行避難グッズの展示販売もあった。勉強になった。今年も販売があるといいな

つまり、公において発災時には犬猫と一緒に避難するのが推奨されているということ。まず飼い主はここを基軸として考えてほしい。ほかの人に迷惑をかけてしまうかも、とか、嫌がられてしまうかも、と思ってしまう気持ちはわかる。でも、だからといって犬猫を自宅に置き去りにするのは、現代の動物福祉の観点からして許されることではない。必ず一緒に連れて行こう。

鎖につないだまま人間だけ避難したら、そのまま死んでしまうこともある(東北大震災のとき痛ましい写真をたくさん見た)。かといって鎖から放ったら、果たして再会ができるだろうか。遠い避難所に移動した場合、犬たちは何を食べて生きていけばいいのか。さらには、オスもメスも避妊去勢手術をしていなかったら、野で繁殖してしまうという新たな問題を生むことにもなる。

だから飼い犬、飼い猫は、つねに飼い主の手元において管理することが重要。それは動物に対しての責任であると同時に、社会への責任でもある。

でもだからといって「体育館の中に犬も入っていいでしょ!」と、権利ばかり主張するのもよろしくない。同行避難を行うためには、飼い主の「義務」も生じる。つまり避難所等のルールに従い、よそ様に極力迷惑をかけないように配慮しないといけない。アレルギーの人もいるかもしれないし、なにしろみんな異常事態で、心理的に強いストレスがかかっているからトラブルも起きやすい一発触発の場なのだ。

もちろん、飼い主もパニックになっているかもしれない。そして、動物たちもだ。いつもならできること(無駄吠えしない、静かに寝て待つなど)ができなくなる可能性も高い。動物たちだって自然エネルギーの脅威を感じるし、飼い主の緊張具合や過敏さを察知して不安が高まる。だからこそ、そんなスクランブル時に少しでも冷静でいられるように、避難訓練に参加することが重要なのだ。

2016年渋谷区防災フェスにて。NPOの「共助」の力も素晴らしい。日頃から寄付などして応援することも大事かと思う

動物に対する扱いには地域差がある

しかし残念なことに、同行避難については、全国津々浦々の地方自治体で、同じレベルで取り組みが推進されているかというとそうではなく、温度差がある。それは自治体の首長の価値観によることもあるし、防災部署の担当者のやる気の違い(動物好きかどうかも含み)かもしれないし、またその取り組みを理解する地元住民の感情の差のこともある。難しい問題で、短期間の間に価値観を変革するのはなかなか大変だとは思う。

しかし時間がかかっても、愛する伴侶動物のために、日本を変えていかねばならない。これもアニマル・ウェルフェアのひとつだ。私たちには、愛犬たちを加護する責任がある。飼い主が自分の住む自治体に対して「そろそろ防災の日ですが、うちの市もペット同行避難訓練はやっていますか?」「万が一の発災時、犬とどこへ同行避難すればいいですか?」などと、ひとりでも多くの飼い主がアクションを起こすことも必要ではないか。なにしろ環境省が同行避難を推奨しているのだから。自治体に動いてもらえるように、自分も同行避難への参加意思表明をすることが最初の一歩となる。

公助、共助、自助がある

日本は、優れた行政の力があり、頼りになる。さらに近年ではNPOや動物福祉団体、獣医師会なども迅速な行動にでてくれる。素晴らしいマンパワーだと思う。

でも、まずは人命が優先。犬たちの輸送や、フードや薬品などが後回しになるのは致し方ない。

●公助:国や自治体による助け(自衛隊の派遣、警察、消防など)
●共助:親戚、友人、被災者同士、ボランティア、動物福祉団体、企業などの助け
●自助:自分、自分の家族

2016年渋谷区防災フェスにて。渋谷区が被災したら、練馬駐屯地の自衛隊が駆けつけてくれるとのこと。ありがたいことです

救援物資が届く日数は、災害の規模にもよるから一概に言えない。地元自治体そのものが被災することもあるので、サポートができないこともある。そして初期の救援物資は、まずは人間のためのものだ。

だから自分の犬猫の数日間分のフード、水、トイレシーツ、持病の薬、リードなどは、事前に飼い主が準備しておくことが欠かせない。私はクーパーとメルと黒猫のために、5日分くらいを用意して犬猫用避難袋に入れている。本当は1週間分くらい用意しておきたいのだが、これがまた大型犬2頭、猫1頭となると、けっこうな分量になる(そう考えると多頭飼育の数の上限が、おのずと決まってくる気もするんだよね……)。人間家族分の食料、水なども背負わないといけないし。

そう、天災はいつ起きるかわからない。家族全員が家にいるときならまだしも、私だけ家にいるときや、私すら家にいないときだって起こりうる。だから夫に、うちはこれ以上、犬猫を増やしてはいけないと、私は釘を刺されている(苦笑)。私の腕は2本だから、犬は2頭まで。猫と避難グッズはリュックに入れて、逃げようと思っている。そういうシミュレーションをしておくことや、家族会議をして担当を決めたり、スマホがつながらなくなることを想定した連絡方法、家が倒壊した際の集合場所などを共有しておく。生き残るサバイバル精神を発揮せねば。

飼い主はまず「自助」を頑張る

環境省の同行避難のHPでも「発災時に外出しているなど、ペットと離れた場所にいた場合は、自分自身の被災状況、周囲の状況、自宅までの距離、避難指示等を考えて、飼い主自身によりペットを避難させることが可能かどうかの判断が必要となる」と書いてある。本当に、実際はどんな風になるか、パニックになるか、わからない。この不安に打ち勝つためにも、前準備が大事だ。

昨年に引き続き、東京都渋谷区の「渋谷区総合防災訓練 SHIBUYA BOSAI FES」(防災フェス)のペットゾーンの運営にかかわる一般社団法人 Do One Goodの代表・高橋一聡さんは、東北大震災や熊本地震の現場にいまも足繁く通い、支援を続けている。そんな彼に防災についてのアドバイスを求めると、

「同行避難については、公助に頼りすぎのように感じます。避難所に入るまで、まず自助でなんとか乗り切る備えをしておくことが大切です。また公助は一律のサポートしかできません。復興に向けて、自立を加速させるためには、いかに平常時から自分なりの避難方法などをカスタマイズしておくかが重要です。フードなどのモノだけでなく、またクルマなどの避難方法、避難経路だけでなく、そういうハード面も大事なのですが、日頃からのしつけ(呼び戻しやケージレスト<ケージの中で静かに待てたり、休息をとれること>、人に迷惑をかけないモラルといったソフト面も非常に大事なんです」と教えてくれた。

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白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

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