秋の行楽シーズンに向けて。犬連れロングドライブの秘訣

| 白石かえ
出典: ©白石かえ

9月、10月は3連休もあり行楽にぴったり。やっと涼しくなり、犬が遊びやすい季節になります。ロングドライブ旅行にも最適なシーズン。ポイントに気をつけて楽しみましょう。

10年前、20年前に比べて、近年は犬連れドライブをする家族が増えた。高速道路のパーキング・エリア(PA)、サービス・エリア(SA)に入ると、ドライブの合間に休憩をさせてもらっている犬たちをよく見かける。連休ともなると、ショードッグ会場さながらに、実に多種多様な犬たちが闊歩していたりする。犬オタク(犬マニア♥)としては眺めるのも楽しい。

7月に、アメリカ帰りの犬友達と、シャイロ・シェパードという希少犬種を岩手まで送ってきた。高速道路のドッグランでお水休憩

また、SAには犬連れOKのテラス席も増えてきた。日本もだんだん犬の市民権がアップしたなぁと嬉しくなる。

そのうえドッグランがあるところもぞくぞく増えている。ドッグランの中にアジリティーっぽい犬用遊具(!?)まで設置されるほど力の入っているところまである。犬用水飲み場、ウンチ用ゴミ箱もあり、大変便利。

ドッグランのとなりに犬用トイレもあり

とくにわが家のように大型犬がいる家庭では、JRなどの公共交通機関に(残念ながら)乗れないので、旅はすべてクルマで移動するしかない。飛行機には乗れるけれど、到着先でレンタカーを探すのは至難の業ではないかと考え、つい敬遠してしまう。

しかも犬連れ旅行は、フードとか敷物とかお掃除セットとか、何かと荷物がかさむもの。だからやっぱり自宅からマイカーがいちばん。よって、高速道路のドッグ・フレンドリーな設備は、本当にありがたい。犬連れドライブ旅行が行きやすい日本になってきた。

ただし、うちのクーパー(ジャーマン・ショートヘアード・ポインター)やメル(ボクサー)のように、どの犬でもクルマが平気かというと、そうではない。またクルマが好きでも、長距離ドライブでは配慮してあげねばならないこともある。そのポイントをあげてみよう。

無理はさせない。クルマ好きにするための予行演習を

まず、最初が肝心。初めてのドライブで、いきなりロングドライブに行くのは厳禁だ。とくに子犬の場合、体力も心も幼いのに、初めて嗅ぐニオイの車内に閉じ込められ、移動するというのはかなり心身の負担になる。

ときどき子犬を迎えた嬉しさのあまりに、すぐ旅行に行こうとかドライブに行こうとする話を聞くが、ちょっと待って。子犬の身になって考えてみよう。ニンゲンの赤ちゃんだったら、そんな過酷なことをやらせるだろうか。子犬はまだこの世に生まれて数ヶ月で、臓器もまだ未成熟。一生、クルマ好きの犬にするか、クルマ酔いの犬にしてしまうかどうかは、この初期段階の体験にかかっていると言っても過言ではない。

とにかく成功体験を条件づけることが大切だ。まずクルマで3〜5分ほどのすごく近所の、いつも散歩に行く公園などに載せて行こう。酔うヒマもないうちに到着することがポイント。そして着いた先が、馴染みの楽しい記憶のある場所であることも大事。

いちばん最初は、クルマのエンジンをかけずに、車内に載せるだけの練習するとなおよい。さんざん車内のニオイを嗅がせてあげる。そしてどこにも行かず、しばらくしたらクルマから降ろす。そういう練習を数回やってみて、まずはクルマそのものに慣らしていく

よくありがちな失敗ケースは、クルマデビューで動物病院に連れて行かれること。ただでさえ初めてで不安なクルマ→連れて行かれた先はいろいろな動物や消毒薬のニオイのする不安と恐怖に満ちた場所→そこで知らない人たち(獣医さんなど)に囲まれ、テーブルに載せられて拘束され、チクリと注射された! ……などという経験をすると、クルマ=怖いところに連れて行かれる!と犬は学習してしまう。

なので、最初はごく近所の楽しい場所へ何度も連れて行き、クルマ=楽しい場所へ連れて行ってもらえる!と学習させることが大事。近所の駅まで会社帰りのお父さんをお迎えに行くのでもいい。クルマ=大好きな家族にまた会えるラッキーなモノ!などと、とにかくクルマに乗ることは、犬自身にとってメリットがあるものなのだと記憶させよう。

そして徐々に乗車距離、時間を延ばしていく。一気に無理はさせない。クルマに乗ったら→気持ち悪くなった、という悪い経験をさせたら、犬はそれも暗記してしまう。犬は本当に賢い。「生命の危険を感じるものは避ける」という本能でもある。だから、トラウマをつくってしまうとその記憶を訂正し上書きする方が大変なので、無理をさせないように練習を繰り返す。

さらに、十分慣れたと思っても、いきなりのロングドライブではなく、まずは日帰り旅行を経験してから、お泊まりのロングドライブ旅行に挑戦すること。愛犬がどんな体調不良になるか予見しにくいし、またアクシデントが起きたときの対処法について飼い主も不慣れだからだ。

今の段階でクルマ経験の少ない犬は、秋の行楽に間に合うように、さっそく超ご近所ドライブ練習から始めてみることをオススメする。

出発前のごはんは控えめに

いよいよ出発!という日の朝のごはんは、控えめにすること。これも基本中の基本。ただ食事を完全に抜く方がいい犬もいれば、空腹すぎてもまた気持ち悪くなり黄色い胃酸を吐く犬もいるので、そこは個体差があるから愛犬の様子をよく観察して決めた方がいい。

うちの場合は、朝、いつもの量の1/4くらいあげて、残りをお弁当がてら到着してからあげたり(ただし到着直後の興奮しているときではなく、犬が十分落ち着いてから与える)、途中で食パンや犬用クッキーなど持ち運びしやすい軽食を休憩のたびに少しずつ与えて、完全に胃が空っぽにならないように工夫している。

また、乗る直前ではなく、少しでも長く時間をあけた方がよい。食べてすぐクルマに乗って揺られれば、やはり吐きやすい。車内で吐かれるのは、運転手も焦るので交通安全上もよろしくないし、車内が汚れるし、嘔吐物のニオイで充満するから、できることなら避けたい事態だ。もちろん、犬だってしんどいし。

ちなみにクルマに乗り慣れた犬でも、その日の体調や、食べた量やフードの種類などにより吐くこともある。そのため、いざというときに備えて、ウエットティッシュ、トイレシート、ビニール袋、雑巾などのお掃除セットを持参しておくとよい。

窓から犬の顔をださせるのは禁止

小型犬などで、助手席などの窓から、顔を全部だしている姿をけっこうよく見かけるが、あれは本当に危ない。見ていてハラハラする。まず、頭部がでている、ということはとくに小型犬の場合、体もスポッと抜け落ちる危険性が高い。高速道路で窓からの犬の落下事故というのが実際によくあると取材時に聞いた。高速道路だと、停車して、犬を捕まえにいくことも不可能。後続車を巻き込んだ大事故を誘発する危険もあるから、絶対にNGだ。

もちろん高速道路に限らず、一般道でも同じこと。一般道の場合は、信号待ちもあるし、歩道を歩くほかの犬が目に入るため、クルマの窓から身を乗り出して吠えている犬もいる。危ない。落下したら骨折しかねないし、クルマに轢かれるかもしれない。犬の交通事故死はニュースにならないからあまり気にしていないかもしれないが、実際には数多く発生している。

たしかに、窓から顔を出して、風を受けて耳をハタハタをたなびかせている姿は可愛いし、気持ちよさそうではあるのだけれど、愛犬を殺したくないのなら、窓は閉めよう。

暑がる場合は、冷房を下げる。犬は人間よりも体温が高く38℃ぐらいある。だから、人間より冷房は強めがお好み。人間が肌寒いと思うくらいの温度が犬にはちょうどいい。

またエアコンの吹き出し口がフロントシートにしかないクルマの場合は、リアシートやラゲッジまで冷風が届かないことも多く、運転席や助手席は涼しくても、後ろは暑いということもある。とくに後方から西日が当たっているときは要注意。

ちなみに、クルマ酔い防止などのためにどうしても窓を少し開けてあげたい、ということはあるかもしれない。そのときは、開けた窓の上部にはめる園芸用ラティスのような伸縮性の柵(フェンス)が専用グッズとして市販されている。それでも頭がでるほど窓を下げるのは危ないので、鼻の先がでるかでないかくらいの幅だけ窓を開け、風を通すようにしよう。

犬の乗車スペースは安全第一で

安全運転、そして万が一の事故のときにつぶれたドアの隙間から脱走しないためにも、犬は後部座席かラゲッジスペースに、頑丈な金属でつくられた柵か、硬質プラスチック製のペットキャリーに入れて載せるのが望ましい。

飛行機に乗せるときにも使われるアメリカ製の「バリケンネル」など、IATA(国際航空運送協会。International Air Transport Association。世界の航空会社で構成される業界団体。本社機構はスイス・ジュネーブ)の基準をクリアしているものが安心。頑丈だし、耐久性もある。万が一、追突されても、中の犬も守られるだろうし、衝突時の衝撃でフロントガラスやフロントシートに犬が飛んでこないのがいい。

事故の衝撃の際に、後部座席の犬が前に飛んできて、フロントガラスを突き破って車外に投げ出されたり、運転手の頭部に激突することもあるという。犬の体が飼い主にとっての凶器になるということ。なんて痛ましい。なので、ソフトケージよりも頑丈なハードケージの方がいい。

またケージは、ブレーキをかけたとき、または発進したときに、前後にずれたり動いたりしないように、進行方向に対して真横に置くのが理想。たびたび揺れるのは、クルマ酔いの原因にもなる。小型犬のケージなら、後部座席の足元にスポッと入るといちばん安定すると思う。大型犬の場合は、ラゲッジスペースで横向きに入れて、数本のベルトでしっかり固定する。

しかしながら、ハードケージには少々難点がある。暑い時期は硬質プラスティックにおおわれたケージは、犬の体温がこもり、中が熱くなりやすい。日本はヨーロッパなどに比べて、夏は高温多湿。ハードケージ輸送は熱中症にならないか心配だ。とくにうちの場合、メル(ボクサー)が短頭種で熱さに弱いので、これは悪い例なんだけど後部座席にそのまま載せている。これなら冷房の風が届きやすい。フレンチ・ブルドッグなどの短頭種、グレート・ピレニーズ、サモエド、シベリアン・ハスキーのような寒い国で働いていた長毛種、そして体温調節機能の下がった老犬、心臓の悪い犬などは、暑さに対する耐性が弱いので、無視できない問題なのだ。事故死も困るが、熱中症で死亡するのも困る。非常に悩ましい。

夏場はバリケンには入れずに、エアコンの冷房の風がよく届く後部座席に犬を載せている。でもこれは本当はいけない。熱中症予防と安全確保、この2つの問題は飼い主にとって大きな悩み。ただ言えることは、運転席や助手席など、前列のシートに犬が来るのは絶対禁止。ハンドル操作を誤る危険がある。そんなことで交通事故を起こしたら人様にも大迷惑だし、犬が悪者になってしまう。後部座席に置くのなら、おとなしくそこで休めるように、責任をもってトレーニングをする

解決策としていいなと思ったのが、犬専用シートベルトとして開発された頑丈なハーネス。装着し、それを人間のシートベルトに通すタイプのものだ。ドイツから取り寄せてみた。ハーネスの中に薄い鉄板が入っており、強い衝撃が加わってもちぎれない。また胸部を幅広く覆っているから、首を圧迫することもない。これなら座席の上で足を伸ばして犬も寝られる。エアコンの風も届く。

問題は、近所に出かけるときにワクワクしてはしゃぎ「一刻も早くクルマに乗せてくれーっ」と騒ぐ犬にいちいち装着させるのがちょっと面倒なこと。それともうひとつ重大な問題が。それはこの頑丈な犬用シートベルト・ハーネスが日本で購入できないことだ(どこかのメーカーさん、輸入してくれないないかなー)。ちなみに、日本で市販されているもので犬用シートベルトと書いてあっても、交通事故の安全テストをクリアしていない首輪やハーネス式のものは正直言って推奨できない。犬の頸椎骨折や内臓破裂などを引き起こす可能性がある。

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白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

白石かえ

犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパンの広報室。ツキノワグマなど野生動物も好き。犬猫と暮らして30数年。家族(群れ)の悦び、信頼の笑顔、死別・闘病のいたみなど、生き物として大事なことはほとんど犬猫から教わった。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせるような、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

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