子犬の飼い主さんが行える、効果的な「社会化」

| 臼井 京音

子犬には「社会化」が大切ってよく聞くけど、具体的に必要なことは? 成犬からでは手遅れ? 今回は、犬の幼稚園の園長歴10年の筆者が、実際に通園していた犬たちとの関わりをとおして感じた「社会化」のポイントと、飼い主さんが行える方法についてご紹介します。

社会化とは、犬が生きていく社会に慣れること

子犬には社会化期と呼ばれる時期があります。個体差があると言われますが、大体生後3週齢から14週齢までで、わかりやすく表現すれば「警戒心よりも好奇心のほうが高い時期」です。

最初の社会化は親犬やきょうだい犬を通して。犬社会のマナーなどを学ぶチャンスです。

生後4カ月齢位からは警戒心がアップしてくるので、いわゆる「警戒吠え」が始まる子犬も少なくないはず。「ピンポ~ン」というドアチャイムの音をはじめ、救急車の音、宅配業者さん、散歩で出会うほかの犬などに、ある日突然「ワンワンッ」と吠えるようになったと驚く飼い主さんもめずらしくありません。「うちのコ、それまでは全然吠えることなんてなかったのに……」と。

犬の一生に一度しかない「社会化期」のうちに、飼い主さんは何よりも、愛犬が暮らす社会の様々な環境に慣れさせる「社会化」に力を入れてあげたいものです。
オスワリやマテなどのトレーニングは、社会化期を過ぎてからスタートしても大丈夫。その証拠に、盲導犬の候補生は、1歳位までは一般家庭で「社会化」だけを行うと言っても過言ではありません。子犬期を過ぎて訓練所に入ってから、初めて盲導犬として必要なトレーニングを開始するのです。

動物病院で愛犬が安全に受診できるように、仰向け慣れや、どこを触られても大丈夫なようにする練習は、子犬のうちから始めましょう。

社会化期に適切な社会化を逃してしまった場合、大きな物音が怖い、ほかの犬が苦手、見知らぬ人が怖い……。と、まるで自分が生きている環境がお化け屋敷のように怖いことばかりになってしまう可能性も。愛犬に「犬生」をストレスなく、ココロもカラダも健やかに過ごさせてあげるために、適切な社会化は不可欠なのです。

社会化は可能な限り早く

様々な物を受け入れる器が広く、環境に順応しやすい子犬の社会化期。生後半年齢にかけて高かった好奇心はどんどん下降していき、反比例して警戒心が上昇してくるので、なるべく早期から社会化を開始してあげるのが理想的です。

けれども、ここで問題になってくるのが混合ワクチンの接種プログラムとの兼ね合いでしょう。

筆者が運営していた犬の幼稚園では、愛犬のかかりつけ動物病院にならって「2回目のワクチンが終わって、抗体を獲得する2週間後からお散歩デビューを。それまでは、抱っこ散歩がオススメです」と飼い主さんにお伝えしていました。

動物病院にも、おやつ持参で子犬期から慣らしてあげたいものです。

抱っこ散歩は、屋外の刺激に子犬を慣れさせるために行います。ほかの犬の排泄物に直接触れないので、感染症にかかるリスクを減らせるのが安心ポイント。
1日5~10分でも良いので、チーズやレバーなど魅力的なおやつを持参で出かけてみてください。

抱っこ散歩は無理せず楽しく

子犬を抱っこして見せてあげたいものは、バイクなど大きな音を出す乗り物、台車、踏切、猫や鳩などの動物、赤ちゃんや子供たちなど。
様々なタイプの人や音に慣れさせるため、商店街なども出かけたいスポットのひとつです。ただし、臆病なタイプの子犬の場合、最初に人通りの少ない場所で十分に慣らしてから、徐々に音や匂いも多様な場所に連れて行くようにしたいもの。無理は禁物です。恐怖体験のトラウマを作らないようにしましょう。子犬の様子を見ながら、ゆっくりと対象物に近づいて行きます。フードやおやつをあげながら近づけば、対象物も良いイメージになるはず!

自動車や自転車や台車が行き交い、多くの物音と人があふれる商店街で社会化レッスン。お散歩デビューしてからも、1歳位までは社会化を継続させて。

飼い主さんが子犬をやさしく撫でたり、「すごいね」などと自信をつけさせてあげられるように声をかけたりして、抱っこ散歩が楽しいひとときになるようにするのも大切です。

可能な限りに早期に開始したい抱っこ散歩ですが、子犬を自宅に迎えてから1週間位は、まずは子犬が新しい家族に慣れることを優先させましょう。
そんな、抱っこ散歩デビュー前の子犬におすすめなのが、犬の社会化のための音響CDです。家電などの生活音から、動物の鳴き声、雷や花火の音など、多岐にわたる音響が満載の市販のCDを、筆者は犬の幼稚園でも活用していました。
犬たちが遊んだり、食べたり、ウトウトしていたりするときに、最初は小さなボリュームでCDをかけて。子犬が怖がらず慣れてきた様子が見られたら、少しずつボリュームをアップします。

おもちゃで遊んでいる時など、楽しいひとときに音響CDを使って音慣れを。

実はこの音響CDによる社会化は、外の世界を知らずに育った保護犬にもおすすめです。

パピーパーティでほかの犬との交流を

飼い主さんだけではなかなかむずかしい社会化の対象のひとつが、ほかの犬に慣れさせること。
そこで利用したいのが、動物病院や犬のしつけ教室などで開催されているパピーパーティ。欧米での呼び名がそのまま日本に上陸して使われているようですが、パーティと言っても、にぎやかなイベントではなく、子犬同士が社交をする機会と考えてください。

ドッグトレーナーが、子犬同士が上手にあいさつできたり遊べたりするように導いてくれて安心なのが、パピーパーティ最大のメリット。子犬が怖い思いをしないように細心の注意を払いながら、メンバーを選んで犬同士を触れ合わせてくれるはずです。

パピーパーティのひとコマ。犬のプロのもとで安心して子犬同士の関わりを持たせられます

自信がついていない子犬期には、恐怖を抱く経験をさせないことがとにかく重要。ほかの犬に追い詰められたり威嚇されたりすると、「ほかの犬って怖い~! 無理」とインプットされてしまうので注意が必要なのです。
そういう意味で、お散歩デビューしてからすぐに子犬をドッグランに連れて行くことは推奨できません。
ほかの犬に、お散歩中にリードを引っ張って無理やり近づけたり、抱っこをしながら近づけたりしても、子犬は自発的に近寄ったわけではないので「自信」は育まれないと考えられます。

ほかの犬が苦手な愛犬ならば、犬のプロが、犬同士のマナーを身につけた犬とだけ触れ合わせてくれる、犬の幼稚園のような施設に通いながら社会化ができれば安全です。

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臼井 京音

ドッグライター・写真家として、15年以上にわたり日本各地や世界の犬事情を取材。『愛犬の友』、『BUHI』、『AERA』などの雑誌や毎日新聞の連載コラム(2009年終了)など、様々な媒体で執筆活動を行う。オーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、2007年には、東京都中央区に「犬の幼稚園 Urban Paws」をオープン。園長としても、飼い主さんに役立つ情報の発信に尽力。
自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ドッグリゾートWoof、P2、
DOG&CAT、ドッグサロンDogoldなどのインテリアにも使用されている。
東京都動物愛護推進員、東京都中央区の動物との共生推進員。

主な著書:『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本―上手な育て方としつけ方をアドバイス! 』
編集or執筆担当書籍:『最新版 愛犬の病気百科』、『愛犬をケガや病気から守る本』、『最新版 愛犬の繁殖と育児百科』、『フレンチブルドッグ生活の家計簿』など多数

臼井 京音

ドッグライター・写真家として、15年以上にわたり日本各地や世界の犬事情を取材。『愛犬の友』、『BUHI』、『AERA』などの雑誌や毎日新聞の連載コラム(2009年終了)など、様々な媒体で執筆活動を行う。オーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、2007年には、東京都中央区に「犬の幼稚園 Urban Paws」をオープン。園長としても、飼い主さんに役立つ情報の発信に尽力。
自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ドッグリゾートWoof、P2、
DOG&CAT、ドッグサロンDogoldなどのインテリアにも使用されている。
東京都動物愛護推進員、東京都中央区の動物との共生推進員。

主な著書:『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本―上手な育て方としつけ方をアドバイス! 』
編集or執筆担当書籍:『最新版 愛犬の病気百科』、『愛犬をケガや病気から守る本』、『最新版 愛犬の繁殖と育児百科』、『フレンチブルドッグ生活の家計簿』など多数

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